ドイツで鍛える生活 17巻
ここまでのいきさつを読んでいない方は前書きから順にどうぞ。
1. ドイツ撤退への道 #2
前回の続き(16巻:ドイツ撤退への道 #1)
ネットの解約のお手紙はどうなったかというと 。
お返事がきたー。解約完了ー!と思いきや…。
『ドイツを出て海外に住むからと言って、
2年契約を解約できるということはありません』
ガーン。
『しかしながら、解約する手筈はあります。
次に住む国の住民票を私たちに送り云々~』
いやねえ、その国の住民票は…日本語なんですけど~。
あんたたち理解できないでしょーがーっ。
ん!? ってことは大使館の翻訳の認証がいる…。
翻訳。数行でも手数料込みで5000円…。
あーあ。ともかく。
日本に引越ししてからじゃないとできないので後回し。
その間も、毎月の通常額。
数十ユーロの引き落としは続くのだー。あーあ。
で。例の大問題。
最後の日まで使う光熱費の引き落としであるが。
引き落としが完了するまで
銀行口座を開けっ放しで日本に帰国することに。
電気は。電力会社にアパートの契約最終日に。
電話で数値を自分で報告するらしいのだが。
ワタシ、ドイツ語ヘタ。デンワ、ムツカシイ…。
多分、アナタ、イマデキル。とか。
管理会社(大家)の人にドイツ語でグチグチ言ってたら。
電力会社に電話してくれた。
最後の請求書は1ヶ月以内に引き落とされるらしい。
ふう。一つ解決。
「で。暖房代はどうすればよいの?」
(注:ドイツは光熱費の検針が年に一度。そのため、過不足分を年一回支払う年末調整方式)
「今年分は検針の時じゃないとわからない」と管理会社(大家)。
えっ。それって~。いつ?
「8ヶ月後」
「ハ?! 精算が8ヶ月後ということは…それまで銀行口座を閉めれないってこと?」
「そうなりますねえ」
えーっ。日本だったら翌月で終わるものが。
8ヶ月後ですかあ。
で。その暖房代にいくら金を残しておけばいいのか…。
この話を持って銀行に行き、打ち合わせ。
8ヶ月後の引き落としを待ってから、
銀行口座を閉めることはできるとのこと。
「じゃあ。全部引き落としが終わって、その後の金は?」
「ドイツ国内の銀行に限り送金できます」
「…… 」
ドイツ国内の銀行に送金できたって…。
私はドイツを撤退するのに~。
というわけで。
引き落とされる予想額を適当に残し。
すべての引き落としが終わったあと(9ヶ月後ね)。
残金はベルリンにいる日本人の友達のドイツ口座に自動送金する。
で。その友達がいつか日本に帰国するとき、手持ちで持って来てもらう。
という手筈になった。
ウーム。しかし。このシステムでは。
人の協力なしで解決は不可能である。
いやあ。ホント人は1人じゃ生きられません。
次。物理的な引越し。
粗大ゴミはどうすんのかねー。
というまた初歩的な問題。
が。しかし。今回。
救いの女神(= 家の後釜)がいるのだ。
(参照: 13巻 2.辞表提出 )
彼女がすべて引き取ってくれるので。
洗濯機や、布団など家具はすべて置いていく。
よって。
私の引越し荷物は服やらキッチン用品など、
30kg程度のダンボール、2箱程度になる模様。
しかーし。ここは海外。
どこにあるの~?ダンボール?という。
また超初歩的な問題が発生するのだ。
おそらく、30kgに耐えられるダンボールは。
日曜大工店に行けばある。
しかし。そういうのは大体郊外にある。
田舎街では車を持っていない人にはキビシイ…。
ってなわけで。
実は。日本からドイツに引越した時のダンボールを。
1年数ヶ月、大事に取っておいたのだ。
いつか撤退する日のために。と思って…。
役立つ日が来ましたー!
しかし問題はボロイんだな。これが。
もう一回、海を超える引越しに耐えられるのかこのダンボール。
ってなわけで。
頑丈なガムテープで補強することにした。
がっ。ここで問題。
どこに行っても布のガムテープがないっ!
布のガムテープどころか紙のガムテープすらない。
あるのは一カ所切ると、
『メリっ。ビリっ』てすぐ全体が切れててしまうヘボいテープのみ。
これでは補強にならん!
文房具店も、郵便局も、デパートも行った。
金と時間をかけてバスで日曜大工店も行った。
どこもなかった…。
気がつけば、ガムテープを探すこと4日間(←バカ)。
もーっ!この国に頑丈なガムテープはないっ!
翌日、前から計画していた、
スペインのバルセロナへ旅立った。
当然。今、欲しいものはオリーブオイルでも靴でもなく。
ガムテープっ!
デパートで超頑丈そうな奴をみつけ一件落着。
そして。カルパッチョの食中毒で、
もうろうとしたままガムテープを抱えドイツへ戻る。
撤退まで残り2日。
念願のガムテープを使い、必死こいてパッキング。
海を超える引越しはちょっとの荷物でもお金かかるので。
何としても2箱に納めたい。
あとで聞いたのであるが。
ドイツは環境先進国だから、
ガムテープとか使わず、
再生可能な組み立て式の箱を使ったりするので
発達したガムテープがないのでは。とのこと。
なるほど…。
布ガムテープがない。って…この遅れた国めーっ!
という私の発想の方が遅れていた。
というわけだ。
ともかく。日本から来た箱プラス、
スペインのガムテープ+ドイツの紐で。
グルグル巻きにされた私の反エコな荷物が完成。
重さ。測れないけどたぶん、30kgくらい(一箱30kg以上は送れない)。
これ、もう。持ち上げるのも不可能。ってわけで。
どうしたかは。また次回。
2. ドイツ撤退への道 #3
さて。
私の引越しは30kgのダンボール2箱程度。
引越し業者は使えないけれど。
えっこら郵便局まで運ぶのは無理という…。
超中途半端な引越しなのである。
日本だったら宅配業者なり、
郵便局なり(EMS)に電話すれば。
ダンボール1個でも取りに来てくれる。
しかーし。ここはドイツ。
生活の基本は。
『なんでも自分たちでやる』ことである。
集配サービスなぞない。
彼らにとって。
サービスなんつう物体のないものに。
金を出すなんて意味不明なのだ。
周りの人々と協力すれば済むことなのである。
言い換えれば、助け合いの社会。
ドイツ人は堅実(またはケチ)と有名だが。
皆の『一銭たりとも余計な金は払わん!』
という覚悟はすごいんだから。ホント。
よって。
この国のサービス業が発達することはきっと…ない。
もし。それが受け入れられた時は。
おそらく『助け合い』の社会も崩壊したときだろう。
ま。そんなわけで。
集荷のサービスがないなら。
自分たちでやればいいのであるが…。
便利な社会からこの社会へ1人で飛び込んだ私は。
その自分たちの『たち』の部分が欠けているのである。
会社のボスなんかにも頼めるが…。
エレベータないし、5階だし、30kgだし。
ボス。腰抜けちゃったりして~。とか。
運んでもらって『じゃあね』じゃ、失礼だし~。
そのあとにカフェでも行っておごるか。とか。
でも。あの人と会話。弾まないんだよなー。とか。
『助け合い』『頼み合い』の社会に慣れていないもんで。
グチャグチャ考えているうちに面倒くさくなり。
えいっ。悪いクセだが金で解決。
高いけど。日系の運送会社に頼む。
さすが。日系。一箱から取りに来てくれる。
当然、日本人のいないリューベックに支店はないので、
どっかのドイツの運送会社に委託される。
日系といえども。
もうリューベックに来る時は、
日系の「に」の字もないドイツの会社。
ドイツの会社では伝言が伝わってなかったり、
重要な書類が回ってなかったりすることがよくある。
つまり。事務処理があまりできない。
果たして約束通り来てくれるのか…。
ところで。ドイツの集合住宅では。
一階にメインエントランスがあり。
そのドアの外側に、
アパート全員の呼び鈴と名札がある。
郵便や配送などはここに名札がないと。
住所は合っていても持って帰られてしまう。
* * * 荷物ピックアップ当日 * * *
こんな重要な時に。
表札をいたずらで剥がされていたらいかん。と思い。
(ドイツ。わりと自転車泥棒とかイタズラとかが多い)
確認しに1階へ下りる。
えーっ。表札が次に住む人の名前になっているーっ!
ハウスマイスター(家の管理人)が気をきかして。
もう次の人の名前を貼っていたのだ。
もー。ドイツ人。
いつも仕事ちゃんとしてくれないのに。
なぜ、余計なところだけ、早いのだ。
慌てて、自分の名前もセロテープで貼る。
しかし。
通りがかりの若者にいたずらされたら悲しい…。
(↑まだ言ってる。ビョーキ)
1階のメインエントランスがガラスドアなので。
内側からもテキトーなドイツ語でメモを貼る。
『メモ: マユゲに用の方はxxxさんのベルを鳴らしてください』
よし。これで剥がされたとしても、
集配の人が帰ってしまうということがない。
完璧。ふう。あぶなかったー。
そして。金曜日。午後4時。
4時までに荷物取りに来るはずなのだが来ない…。
もーっ。今日、来なかったら、
私、月曜日の飛行機乗れないよー。
と思ってたら。
午後4時30分。来たー!ばんざーい!
やったー!
荷物。ちゃんと取りに来てくれたー!バンザーイ!
指定した日に取りに来てくれただけで。
もー。大感激!
ま。日本じゃ当たり前の事なんだけど…。
が…。あれ?!
控えの伝票もらわなかった…。
あのおっちゃん、なにも確認しなかった。
日本だったら。
ドライバーが伝票を確認し、サインして。
控えを渡し、伝票を荷物に貼って。
『では。確かにお預かりしました』となるわけだが…。
あのドライバー。
『あ。荷物これね。じゃあねー』だけだった…。
私。サインもしていない。
で。伝票をピラピラさせたまま。
荷物にさえ貼らなかった。
あれじゃあ。荷物と伝票がはぐれてしまうーっ!
荷物紛失の可能性大である。
で。『控え』を貰い損ねたので伝票番号さえわからない。
紛失してもトラッキングできないし、
伝票がないのでは、20万円かけた保険もおじゃんである。
『…… 』
もう自分のバカさ加減に腹が立った。
この『鍛える生活』を通して。
ここでは世の中は。
自然に回るものでなく、自分で押して回すもの。
何度も確認して押す姿勢が大事であると。
あんだけ思い知ったはずなのに…。
* * *
ハイ。次。気を取り直して。
口座の金の移動チェック。
3日前。銀行にて、全財産を。
日本の自分の口座に移動したのであるが…。
えーっ。ない。
送金先の日本の口座にもないし。
送金元のドイツの口座にもない。
どこにいっちゃったのー。
私の全財産。
しかし。もうドイツを飛び立つ日がきました。
いろんな問題を残しつつ。
次回は。さようならドイチランド。
続き→ ドイツで鍛える生活18巻