迷走記
ドイツ就職珍道中「ドイツで鍛える生活」が終わり、ドイツに色んな意味で負けて帰ってきたマユゲ。日本に戻ったはいいが、人生完全に白紙…。そして、事実は小説より奇なり。意外な結末を迎えるまでの日本就職ストーリー。迷走記『まえがき』から順にどうぞ。
5. ゴムボートに乗った〜!
諸悪の根源は夢や希望だー!
そんなもんが人を不幸にする。
じゃあ。夢も希望も捨てようじゃないか。
と。やけっぱちで応募し、
働くことになってしまった
巨大スーパーの入り口での立ちんぼの仕事。
(参照:迷走記 4巻)
アメリカ人ボスに。日本語で。
『アナタ、笑顔、足りない!アナタの顔、オソウシキデス~!』と。
言われ続けるもと。
5秒に一回『いらっしゃいませ』を叫ぶ × 8時間
× ン年の人生は辛すぎる。
と。そそくさと退散し、
またプーになったわけだが…ここで問題が。
私は今。実家に居候している。
21歳の時には。もう。さっさと家を出たので、
16年ぶりの同居である。
しかーし。21歳で自立したはずの娘が。
いい年こいて家にいて、プラス、無職ときた。
親としては。イライラっとしていたが。
やっと働きに出てくれた。よかったー。
と思った矢先であった。というわけで…。
バイトとはいえ、3日で辞めたとは言えなくなってしまった…。
そう。世のリストラされたお父さんが。
背広を着て、勇ましく『いってきまーす!』と家を出て。
公園に向かうように、私も同じ状況に陥ってしまった…。
なんと。架空出勤である。
まさか。自分にこんなことが起こるとは…。
まあ。バイトでシフト。
ということになっているので。
普段着で、気が向いた時に。
9時間くらい家を空ければよいわけで。
背広を着たお父さんよりかは恵まれているが…。
(どういうレベルの話だっ)
それを聞きつけた友達なんかは。
有給取るから!つきあうよ!とか言ってくれたりして。
ほんと。持つべきものは友達かもしれない。
で。連日。34℃の猛暑。
外にいられないので、
カフェとかに行ったりするわけだが。
やはり。都会でブラブラするには。
毎日。それなりに金を遣う。
暑い。死ぬーっ!→カフェへ
腹減ったなあ→ランチ
ふらっとビックカメラ→分割でmacを買ったり
店をウロウロ→ 本とか服を購入したり。
暑い。死ぬー!→ 区民プールへ行ったり
(プール道具をバイクに積んでいる)
疲れた~ → 再びカフェへ。とか。
毎回。架空出勤がこんな調子である。
来月こそはこんな生活じゃないはず。と。
買い物は、いつも。来月を当てにし。
すべてカードで2回払い。
しかし。どんどん減っていく銀行残高を見る度。
これはいよいよ。まずいなー。
というかんじなのだが…問題は。
なんだか。生活レベルが落とせないのだ。
そういや。小室哲哉が詐欺で逮捕された時。
生活レベルを落とせなかった…。と。言ってたっけ。
規模は違いすぎるけれど。
なんだかわかるような気がした。
とりあえず。カフェにいる時は、
macを持ち込み、職探し。
毎日、3時間くらいは職チェック。
で。まあ。私の職種と、
年齢と経験値のバランスなどの事情により。
どうしても派遣になってしまうのであるが。
週に5, 6件のハイペースで応募し。
で。その間に。派遣会社数社に登録に行ったりしていた。
そんなところへ。ニュース。
* * *
牛丼店で強盗。容疑者は。
妻には。夜中、働いていると嘘をつき、
奪った金は『はい。給料』といって、
妻に渡していた。と供述している。
* * *
泣ける話である。が…。ちょっとこれ。
人ごとじゃないかもーっ!
日が経つにつれ、最初はなんとかなっていた架空出勤も。
数週間経つ頃には。朝が来る度。
「朝が来てしまった…。さて。今日はどうすっかなあ…」と。
もう。さすがに限界に。どうにかせねば~。と思うものの。
仕事は。掴みそうになる度、あと一歩でスルリと手から抜けていった。
明けない夜はない。止まない雨もない。
物事には。どんな事柄でも。
終わりは必ず。あるっ!ゴールはどこかにある…。
一日中、外をフラついて。金もあちこちにバラ撒き。
死ぬほど汗をかいて家にもどると。
居間のテレビがついていた。
* * *
こちら、東京にある○○植物園です。
このような珍しい植物もあるんですねー。
こちら、入場は無料となっておりまーす!
* * *
「ここどこ?」と私。
「小平市だって」と。マユゲ母。
「フーン」と。私。
(ウーム。ここ。明日の出勤場所にいいかも…。植物好きだし~)
まさか。同じテレビを見ている娘が横で。
『おー。ここは明日の架空出勤場所にっ!』
なーんて。こっそり思っているとは。
マユゲ母は、夢にも思ってなかろう。
かわいそうにねえ。
数ヶ月前は『娘はドイツで働いているんですぅ~』
って周りに言ってただろうけど。
ホントは、今。君の娘は無職なんです…。
ま。知らぬが仏とはこのことか。
* * *
居間を出ようとしたその時。
マユゲ母が言った。
『ちょっとーっ。アンタ、家にお金。
働いているんだから。○万円入れてよね」
「ああ。あとで渡すよ」と言って、
2階の自分の部屋へ向かった。
お金ねぇ…。階段をのぼりながら
牛丼屋へ強盗に走ってしまった人の事を。
ちょっとだけ想った。
自分の部屋へ入ると携帯が鳴った。
「あ。○○会社です。本日は登録ありがとうございました」
(おっ。派遣会社だ)
「早速ですが、来週から1週間の短期のお仕事がありまして。
お願いできないかとー。デジカメのテストのお仕事なんですけど…」
キター!仕事がキターッ!
これは毎日、街をふらつき、お茶して。
セールでお買い物して、macまで買い。
無職なのに、一生懸命、日本経済をまわしたご褒美だー!
金は天下のまわりもの。
昨日、ブ○っクス・ブ○ザーズで面接用のシャツを買ったからな。
あれがよかったのかな。
もう一枚買えば、もう1週間仕事あるのかしら~?
それとも。もっと高いもの買えば。
一ヶ月の仕事が来るのか~?
大海原に落っこち。
(自分で入っちゃったんだけど…)
行き着く先もなく。方向も見失い、溺れそうだったが。
通りかかったゴムボートになんとか。
手がひっかかった。助かった~。
そして。なんとなく。
大きい船がどこか近くまで。
来ている気配があった。なにかが近い…。
ま。ともかく。
仕事や金に困った時は。
金を遣えということだ(ホントか?)。
世の中は循環。循環。
世の中は。まわせ。まわせ。
では。とりあえず。ゴムボートに乗り。
とあるメーカーのデジカメテストをして参ります。
続き 迷走記6巻